じゃんけん + 短歌

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15:57


錆 び て ゆ く 空 へ 群 れ な す た ち あ ふ ひ 無 力 で あ れ と 言 ひ し 人 あ り



さびてゆくそらへむれなすたちあおいむりょくであれといいしひとあり








 昨日の


 朝日新聞「天声人語」には蛍のことが書かれていた。人間の安易な自然回復への関与が生態系を壊す可能性があるという論調だが、そこに池田澄子さんの俳句が引かれていた。



 じ ゃ ん け ん で 負 け て 蛍 に 生 ま れ た の



 短歌じゃなくて俳句だけども、現代口語で書かれた伝統短詩に久しぶりに「ぐさっ」ときた。口語俳句では寺田良治さんの



 い ち ま い に の び る 涼 し さ 段 ボ ー ル



 が諧謔味があってお気に入りだが、「ぐさっ」ではない。


 さて、じゃんけんというのは公明正大で、それで何ごとかを決定しようとするなら、あとで文句のでない正当性を持っている。持っているだけに、承服しかねる結果については個々人の中に澱がたまる。結果には従うが、人によって潔さが伴わなければ、それはわだかまりとなる。この蛍になった作中主体はいったい誰とじゃんけんをしたのだろう? そんな思いが頭をめぐる。一切の決定権を持っている閻魔大王がじゃんけんという取引でもって蛍として命を再び与えるというのも変だが、一見公明であるじゃんけん自体にひそむ儚さ危うさが蛍とよく合っている。といっても、蝉にしろ、蛍にしろ幼虫である時期を勘定に入れないのは人間の身勝手であって「あはれに感じたい病」みたいなものだけど、それは否定するものでもない。


 しかし、どんな状況で誰とじゃんけんしたのか?蛍とは何者か?の問いが頭から離れない、気になる。これからときどき思い出しては、ああ、こういう状況でか!とその場その場での解答が出てきそうな深い意味合いのある句だ。


 もう一つ、じゃんけんで思い出したのは娘さんが保育園に通っていたころの話で、ある時期、保育園に行くのを嫌がるようになった。理由を聞くと、このごろ「毎日鬼ごっこがあって、捕まるのが嫌なの」だという。大勢でじゃんけんをすれば鬼になる、つまりじゃんけんで負ける確率は低い。捕まるより鬼の方がいいというのである。しかし、鬼になれる確率は低い。うー、これは切ない問題である。私が提案した解決法は簡単で「私が鬼になると言えばいい」というもので、ほかの園児たちは鬼にはなりたくないので、一件落着である。


 ただ、鬼ごっこを嫌う理由が「捕まりたくない」というのは、少し情けない気がしないでもない。「逃げ切る」という積極性が感じられない。うちの娘さんは大丈夫なんかいなと思っていたら、小学校に上がり、学童保育で百人一首を覚えた。これは一学年上の女子一人を除けば、男女学年関係なく圧倒的に強かったらしい。それは今でも続いていて大学で競技歌留多のクラブに入り、今も社会人で大会に参加している。「なんで百人一首だったの?」と尋ねたことがあったが「これなら人に負けないかもしれないと思えた」という返事だった。住む水、育つ水。鬼ごっこでの心配は杞憂であった。全国で五十位内には入ったが、クィーン戦の挑戦までは届かなかった。


 さて、私は一見公明正大だが服従を前提とした、じゃんけんをしなければならない状況にはできるだけ近寄らないようにしている。が、もし仮にやらなければならぬ状況になって、じゃんけんで負けたら何に生まれかわろうか。もしくは、何に生まれ変らせられることになるのだろう? そんなこんな。今日は早い更新。









只今のながらCD

CANIS LUPUS / DARRYL WAY’S WOLF
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Commented by やねうらねこ at 2009-07-05 18:12 x
>安易な自然回復への関与が生態系を壊す可能性
は確かにありますね。生態系のことをよくわかっている方はそういうことを話されることが多いです。でも、素朴にいろいろ考えていると…なかなかそれも難しい。

パンタタさん、文章うまいですね。
Commented by さとやん at 2009-07-05 18:54 x
じゃんけんで負けて蛍に生まれたの

 この句はおいらもぐさっときました。何ともいえぬ感慨が。

 おお、娘さん競技 かるたを!最近、「ちはやふる」というコミックで詳しく知り、今夢中です。漫画はあまり読まないかしら?かーなりおすすめです。(末次由紀、講談社)
Commented by パンタタ at 2009-07-05 23:27 x
やねうらねこさんへ
蛍は地域によって光り方、点滅の間隔が違ったりするのだそう、とお咲きさんが教えてくれました。
そういったことって、地域、自然環境などに適応したものなんでしょうね。
あっちの蛍をこっちに持ってきたらいい、と単純にはいかないみたい。

文章、お褒めありがとう、照れますです、汗;
Commented by パンタタ at 2009-07-05 23:33 x
さとやんさんへ
池田澄子さんて70歳を超えたはるはずです、すごいでよね。

「ちはやふる」は何か漫画の賞をとったんですよね。
娘さんがどういう世界で頑張ってたのか、
参考になるかもしれんと思い読んでみようかと思ってます。
Commented by さとやん at 2009-07-05 23:50 x
是非、

読んでみて下さいませ。

作品そのものもかなり素晴らしい。ちはやちゃん(ヒロインの名前)ちょー可愛いもん(*^_^*)
Commented by パンタタ at 2009-07-05 23:53 x
さとやんさんへ

何巻でてるの? まだ連載中?

読んでみるか......CD買いすぎたほとぼりが冷めてからね....-"-;
Commented by さとやん at 2009-07-06 00:15 x
今、5巻まで。

連載中ですとも。

読んだら止まらないはず。娘さんにもおすすめしときます。
Commented by パンタタ at 2009-07-06 00:37 x
さとやんさんへ

へい、分かりました。娘さんは読んでるじゃないかなあ.....
Commented by すずぼん at 2009-07-07 22:20 x
天声人語わたしも読みました。が、句のことはな~んも考えなかったです・・・。
パンタタさんの思考に敬服しました。(という言い方もヘンですが;)
池田澄子さんてもっとずっとお若い方なのかと思ってました。すごい。

娘さんのお話、とてもおもしろく(というか興味深く)拝読しました。
私は普通に、鬼になるのが嫌いでした!ひどく淋しくて不安で。
かといって、上手く隠れすぎて見つけてもらえない時も不安で、泣きそうになってましたが。。
Commented by パンタタ at 2009-07-07 23:23 x
すずぼんさんへ
池田澄子さん何歳のときの句でしょうかね。
若くして作ったとしても、ずいぶん新しい手法だったのではないでしょうか。
最近なら、それはそれでまた別の驚きですよね。

娘さんね、変ですよね。私も鬼が嫌でしたよ。普通はそうですよ。
捕まると何だか寂しくなるのだそうで、
大きくなってから分かったのですが、変に負けず嫌いですね。
鬼に見つけてもらえないかくれんぼの喩は
寺山修二さんが好きでしたね。
Commented by office-nekonote at 2009-07-09 14:30
ぱんたたさん、さとやんさん、横レス失礼します。
『ちはやふる』はマンガ大賞2009受賞でございます。
http://www.karuta.or.jp/topic/20090411.html
読むと元気が出ますよ。
Commented by パンタタ at 2009-07-09 21:38 x
たまちゃんへ
『ちはやふる』なんですが、娘さんに聞いてみたところ、
本人は実践の世界にいるからか、イマイチの感想でした。
私は、娘さんにどんな競技かルールは聞いているのですが、
もう一つよく分からないので、読んでみようかな....
てなところです......-"-;
Commented by office-nekonote at 2009-07-09 22:40
パンタタさん、こんばんにゃ、
>本人は実践の世界
それはそうでしょうね。
それはそれ、これはこれ、で楽しめば良いのでは。
Commented by パンタタ at 2009-07-09 22:59 x
たまちゃんへ
いや、目を通した上での感想らしいですから、
私には分かりません。
ま、漫画一般として考えたら、
ストーリーだけじゃなくて絵柄とかコマ割りとか好みがでるからなあ.....
好みじゃなかったのでしょうね。
Commented by office-nekonote at 2009-07-10 09:34
パンタタさん、おはようにゃ。
私もいまひとつなところがあって、男の子がらみ(最初は友情でそのうちあこがれ1?)なところがなんだかかなあでした。
『ヒカルの碁』には恋愛は出てきません。
もちろん『動物のお医者さん』にはまったく出てきませんが、これは脇においておいて、男の子のこういうものは恋愛禁止だったりするのに女の子のものは恋愛までに行かなくても 憧れがついて回ったりでいささか邪魔。
とりあえず、そこはおばさんパワーで割愛して読んでおります。
くらもちふさこだと絵柄を毎回変えるので 乗れないときがあったりしますので、わかります。
Commented by パンタタ at 2009-07-10 20:26 x
たまちゃんへ
さすがに漫画のことになると、あ、熱いですね。
私は読んでみようかなと思ってるんですがね。
くらもちふさこさん、懐かしいです。
by alglider | 2009-07-05 15:12 | 短歌 | Comments(16)

さびしさを糸でかがればかぎ裂きのかたちしてをり棘のあるらし


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