勝者でも敗者でもなく

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23:26


 月光の会


 会員、小柴節子さんが歌集「しろつめくさの咲く頃に」を上梓された。会員には謹呈したいとのことで送られてきた。奥深くに持たれている確執を解き明かすことはできぬが、自分にちかいものを感じる歌がある。以下。




歩 行 す る あ そ こ で も な く こ こ で も な く あ る は ず の 場 所 そ こ だ け 目 指 し


虚 空 へ 行 く 階 段 あ り て 探 し お り の ぼ り つ め れ ば 何 に つ な が る     虚空:そら


来 な き も の 待 つ の が わ れ の 仕 事 な り 来 て は な ら な い 何 が あ り て も


て の ひ ら に カ ナ リ ア の せ て 夜 を 往 く う た を 忘 れ し お ま え も わ れ も



 待つものや行かねばならぬ強迫を、自身の「生」だ、と自身に言いくるめる。その仕方なさの切実な正当性。あとがきに『「精神の安定や均衡といったものが卑しく見えるときがあるものだ。敗者がその悲劇性によって勝者に打ち勝つ、その瞬間というものがこの世には必ずある」という中村真一郎さんの言葉がバイブルのようなものだった』とある。バイブルというのは救済、拠りどころという意味なのだろう。


 このことはアルコール依存症で入院していたときに、アル中だった尾崎放哉を例にあげ主治医とさんざん論議したことであった。で、私は今のところ、勝者も敗者も御免こうむる位置を保とうとしている。卑怯であるかもしれぬが「治療」だと言い聞かせている。勝者や敗者などといった単純な二分割の葛藤は酒を呼び込むばかりだし、今のところそれは私にとって酒が担保する論理だ。


 言い訳だとの指弾があるかもしれぬが、私は二度とアルコールのただ中に身を置くことはしない。これが第一義である。それがなければ文字どおりの意味でまったきのすべてを失う。だから、そのあいまいな位置を前衛とし、少しずつ歌を確かなものにしていきたい。だいたいがこういう論調事態がアル中の心情にはよろしくないのだ。酒が近づいてくる状態であると言える。お酒を語ることはメタレベルでの論理展開になる。ま、そんなことはどうでもよくて、と避難して、最近、どうも歌がうまくゆかない。こういうときは歌自身が本来持っているだろう力に身をあずけ、修辞に頼らない方がいいのかもしれぬ。難しいなあ…



 酒を断つ妖怪ならばそれでよし、そんなこんなあいまいな夜だ




只今のながらCD

ANOTHER DAY ON EARTH / BRIAN ENO
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Commented by すずぼん at 2010-02-10 17:54 x
ごぶさたでございます。
Bowieの新譜は、財布の中身との兼ね合いで保留中だったのですが、こちらにおじゃましたら、んなこと言ってられんわ!と強気になってしまいました。
が、国内盤と輸入盤どちらにするかでまた迷っております。。。
Commented by すずぼん at 2010-02-10 18:06 x
勝者と敗者。
勝負事以外についてそういう言葉が出るたびに、んなもんないわい!と思っている者です。
何を大切にしたいか。成就とは関係なく。

ちょうどここ2ヶ月、私も考えていたことがありまして。
私が生きる上での最優先事項は、愛する人々を大切にすること。
そのためにはまず私の心身を大切にしなければならないので(ちょっと飛躍)、短歌から離れることにしました。
でもそれは、私が短歌に選ばれた者ではないから可能で。とは抽象的な言い方。
つまるところ、心身のバランスを崩すリスクを犯してまで歌を詠むべき才能なんて全然ないと自身が判断した、ということでもあります。

強いて勝敗をつけるとすれば、表現者として敗者。で、健全な生活者として勝者になりうるかもしれない、ということでしょうか。

傍らに詠うことがつらい方々を見ながらも、私には励ますことも留めようとすることもできない。
言うとしたら「大切なことを貫いてください」という言葉だけでしょう。

なんかこちらに書いたら考えがまとまったような。
今度自分とこでも一度、この3年間を整理しなければ。

以上、勝手な呟きスミマセン!
Commented by パンタタ at 2010-02-10 20:42 x
すずぼんさんへ

ボウイ、私は輸入盤を買いました。少し安かったので、笑

私がどうのこうの言う立場ではありませんが、
すずぼんが短歌をやめてしまうのを寂しく思っている一人です。

>心身のバランスを崩すリスク

を犯してまで私は歌にのめりこんでいないのかもしれませんが、感情のありようを探るリハビリで始めました。

でもね、しんどくても出来上がった歌が自分を助けてくれることってあるよね。
そこが棄てられるのかなあ...???
と、勝手に想像しています。
才能と関係ないところに歌はある気がしますが...

まあ、とにかくご自愛ですね。

Commented by at 2010-02-10 22:29 x
うん、すずぼん、ご自愛です。
Commented by sabuko61 at 2010-02-10 22:47
どちらかに所属させた方が楽だから、そうさせたいのだと思ってるよ。
小学の、紅白の玉入れの時にそう思ったよ。
うちの小学校、玉が手作りだったんですけど、そこに丹前の切れ端で作ったようなのが一個混じってたんです(紅のつもりになって、それは転がっていました)。
少数派ってやっぱりいて、それを取りに真っ先に走る子どもがいるんです。
それが籠に入って数える時に偉い盛り上がるんです。
何が言いたいのかわからなくなってきたんですけど、
適応していたら、所属しなくてもいいのかなって・・・生きにくいですけどね(笑)
Commented by パンタタ at 2010-02-10 22:51 x
文さんへ

そうです、エールを送りましょう。
いや、送りつけましょう、笑

Commented by パンタタ at 2010-02-10 22:57 x
sabuko61さんへ

適応障害があって、
そして、何者かに所属すると虎の威を借りる自分が嫌になって、
ま、いろいろと生きにくいわけですが、
一人でシーソーの真ん中に立って
右足に力を入れたら、次は左へ、
ってやってるわけですが、それじゃどこにも行けないじゃん。
そんなわけで、私も何が言いたいのか分からなく
なってきました、笑
勝者であるとか敗者であるとか、
どっちにしたって、自分の中の痛みを通さなきゃなりません。
巣に帰る鴉も私の暗黒の心の中を通らなければならない、
というやつですね。
やっぱり分かんね。うう。

Commented by sabuko61 at 2010-02-11 14:57
ウ・・ウン ('_`)

経営者セミナーというものに参加した時に(経営者じゃないけど)、恐ろしい数の質問事項に答えてyとxのグラフの四分割のなかに「タイプ」としておさめられるんですけど、真ん中の線の上で大笑いされました。6000人に一人だそうです。
究極の八方美人か、全部の要素を兼ね備えているのか、もう既にこの世に存在すらしていないのかわかりませんが、「収めたがり」なんです。みんな。
お金を払って買い物をしたり、信号を青で渡ったり、人に優しくしたり、勤労と納税をしてたら適応ですよ。(私は勤労と納税はしていませんけどね)笑
Commented by パンタタ at 2010-02-11 21:02 x
sabuko61さんへ

いいじゃないですか6000人に一人、
うらやましいよ。
でも適応って大切ですよ。
ある程度できていないと、じわじわと人格破壊が起きます。
私はアルコール依存症ですが、
お酒を飲んでいたころは、すべてのものを
ネグレクトしていましたし、またされてました。
意志は一切役に立たない世界ですね。

Commented by すずぼん at 2010-02-12 21:53 x
>感情のありようを探るリハビリで始めました。

という言葉、ずしりときました。

そうなんですよね、、「才」とか言ってる時点で、私にとっての短歌ってその程度なんです、きっと。。

文さんとグルになって(笑)のエール、ちょっとうるっときました。
ありがとうございます~(;;)

でもハイク!(ある意味ヒッチハイク!!)やりますので♪

あ、パンタタさんの一言でワタクシも輸入盤に決めました。(まねっこだい!)

お腹治りましたか?
ご自愛を。(ご自愛合戦。)
Commented by パンタタ at 2010-02-13 01:12 x
すずぼんさんへ

ああ、ヒッチハイクに行っちゃうのね。
凛々しいぜ。
私は泣きみそだから、最後の七、七がないと泣けないんです。
未練たらしいとも言いますが。

お腹治りましたが、ちょっと検査せなあかんかもなあ...
胃も変だし、うう。

by alglider | 2010-02-09 21:53 | 短歌 | Comments(11)

さびしさを糸でかがればかぎ裂きのかたちしてをり棘のあるらし


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