墓とブラキオ君

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 郵便物を出した帰り、墓へ散歩に行った。夕方の5時ごろで、もう参っている人はいないだろうと思っていたら、供養花を代えている二人の女性がいた。こちらは用もない墓への散歩だから十分に怪しまれる条件がそろっている。しかも、透明のビニール袋にはブラキオザウルスのブラキオ君が入っている。墓に参っている振りをした。しばらく拝んで、事の成りゆき上とはいえ、どなた様の御墓前に手を合わせたのかと、視線を投げかけると、大きく[墓]とだけ墓石に彫られてあった。こんなのは初めて見たけれど、多分、指定席なのね。でも実際に名前を刻み込むときを迎えたときは、この大きく刻み込まれた[墓]の文字は削り取るのだろうか.....。

 私はよく墓へ散歩に行く。これは、なにも閑とした雰囲気とか佇まいが好きというような寂た趣味ではなく、また夜な夜なフランケンシュタイン博士になるためでもない。ただ名字を見て歩くのが好きだからだ。だから散歩も急がない用向きのときも知らない道を行くことが多い。ぶらぶらと表札を見てまわる。何が面白くて、何が悲しくてそのようなことを、と尋ねられても[好きだから]としか答えようがない。ただ、珍しい名字を発見するとわくわくするし、どこの地に多い姓だろうと想像を巡らし思いを馳せ楽しんでいるのである。近くの散歩コースには[中西]さんというの変哲もない家があるけど、その角を曲ると[西仲]さんである。このような配置の妙も味わえる。お咲きさんに、あの[土居]さんの前を通ってなんて道順を説明すると[土居]さんって何処ってことになる。こんな私だから、年末年始に〒で年賀状のバイトをしたときは、十分に堪能させていただいた。だって、出向かなくても、向こうから[髭]さんとか[鹿熊]さんとかがいらっしゃるんだもの。

 この僻は今に始まったことではない。つまり、アル中回復過程で始まったことではなく、アル中絶好調、それ以前と三行程を通して延々と行われている私の典雅な趣味です。絶好調期のそれは、今から思えば随分と危険な行為だったと言える。缶ビール片手のうつろな眼の髭面蓬髪の男が、何の用事もないと一目で判別できるし、ふらふら歩いているんですもの。庭に面したところなんて、下着泥棒と通告されても申し開きはできぬ。とはちょっと誇張かな、まぁ、運が悪けりゃ職質ぐらいの怪しさだったと思う。
 
 ただ、これは断酒会の体験談でも喋らしてもらったんだけれども、表札を見て歩くことは、何も珍名奇名さん探しではないから、当然のことながらよく知っているお名前さんを見て歩くことになる。おぉ山田っ、そう言えば小学校のときに転校してしまった山田君はどんな人生を送っているだろうか?、と。懐かしい過去の旅路に出かけることができる。無料よ無料....。ただし、アル中になってからは、山田君どうしてるかなぁ?から、山田君どんな人生を送っているだろう?になってしまった。やんぬるかな。また、こんな良いこともある。さんざん迷惑をかけた人々、あのころあのとき、の名前に行き当たることがある。私はずっと、気になっているのに、どうしても思い出せない人がいた。迷惑を掛けッぱなしだったのにだ。しかし、この奇癖のおかげで、その名前に行き当たった。○○さん、●●君、あのときは締めきり間に合わなくてごめん、と見知らぬ人の門前で頭を下げる私だった.....。

今日のながらCD
From The Cradle/ERIC CLAPTON

今日の一文
日本脱出したし 皇帝ペンギンも皇帝ペンギン飼育係りも      塚本邦雄
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Commented by at 2006-04-05 15:30 x
あるある!。
アル特有の探索行動ですね、いわゆる行動障害。
Commented by black-board at 2006-04-05 23:29
私の場合、自販機のみを求めて彷徨う行動障害でした。
(人間や風景は付属品だったようにも思います・・・怖!)
by alglider | 2006-04-04 16:55 | 回復過程 | Comments(2)

さびしさを糸でかがればかぎ裂きのかたちしてをり棘のあるらし


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