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あるのすさび

さびしさを糸でかがればかぎ裂きのかたちしてをり棘のあるらし


by alglider
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失語の果てに 一首



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23:59


雲 よ り も 低 く い き か ふ 飛 行 機 の 偶 数 あ り て 終 末 の ご と



くもよりもひくくいきかうひこうきのぐうすうありてしゅうまつのごと





 昨日は


 去年三月二十一日に食道癌で逝った友の家まで線香をあげに行った。彼は高校、大学と続いて後輩になった人物で、後々結婚する彼女も私が紹介したようなものだった。その彼女も39歳という若さで逝き、彼は子供3人を育てあげ55歳で泉下の人となった。七人集まり、線香の後は偲ぶ会となった。大学の文芸部の後輩が酔っ払ってしまって「僕の目標は(詩をかいていた)パンタタさんを追い越すことだった」と言いだしたりしたけど、もうずいぶん追い越されてしまって、彼は大学教授である、笑。


 詩を書いていたことはみんな知っているから、なぜ短歌をやり始めたのかと尋ねられた。中には天皇家との関連で、短歌を否定する者もいたが「それは言うことではない」と諭す者もいて、大人になったものだ。私自身にお酒が入っていたら、もうそこで激しい言い争いになっただろうけれど、私はお酒を断ったから、反対に酒でテンションの上がった議論や話は苦手というか恐怖ですらある。


 その恐怖は短歌を始めたことと関係していて、お酒を止め出したとき自分の内面を見つめ直すために、久しく途絶えていた詩を書きだしたのだが、これが終わらない。果てのないモノローグになり、独りで、今から思えば惨憺たる言葉をえらび螺旋を下りていく羽目になった。そこにふと思い出したかのように心に入ってきたのが定型の短歌だった。その“ふと”のきっかけは覚えていない。お酒をやめて2年目か3年目だったか。定型だから三十一文字に思いを込めて、とにかく一首で形式上は終わる。この“終わる”という現実はありがたかったのだ。目の前に実存として作品があるというのは救いになった。病人の文芸である所以か。


 ただ、お酒をやめたということは、これまでの思考、行動、言説などを全部捨てることであった。「飲み始める前の体験とかは生きてないの?」と訊かれたが、飲み始める前の思考と今を繋ぐ橋は落ちたのだ。つまり、酒を断ってからは一から世界の再構築をしなければならなかった。以前にも書いたが「湯船に右足から入って、左足から入れと注意をされても、それは好き勝手の問題だ、と反論・主張することができない状態」。なぜなら反論の拠り所、つまりこれまでの常識や体験などは酒を断ったと同時に有効でなくなったのだ。今でも「左足から入れ」と言われれば「すみません」と謝る私がいる。


 そして、お酒を断つ期間が長くなれば、世間に戻ってこられたか、というと、最近はますます周囲が恐くなって物事が言えない、反論を恐れるあまりに沈黙する、不安症が出て失語症に近い状態に陥る時間が増えてきた。


 両手で足りぬ友の死、わが身の病気、お咲きさん持病、義母の脳梗塞など「老いと病」が身近なものとなってきた。それ自体は“生”の自然なことではあるが、アルコール依存の後遺症というか、酒をやめても進行性である精神の病だから、空から覆いかぶさり地から湧く不安をの中に晒されるときがある。私は黙るだろう。意識的な態度として向き合った失語の果てに歌はあるだろう。





 そんなこんな。



只今のながらCD

KATHI McDONALD / KATHI McDONALD
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Commented by 雪太郎 at 2013-01-14 08:28 x
そうか、詩は、延々と続いてしまうんですね。そう言われれば。
自分の中で区切りをつけないといけないってとこもむつかしいし、
リズム感もスピード感も全体の重量も、すべて、自分が決めないといけない。
・・・はぁ~。

これまで好きな詩集も単に「うつくしいなぁ」とか「あるある!」とかいう感覚で
楽しんでたんですけど、詩を書くという視点で読み直してみようと思いました。
いや、私は詩、書けないですけどね。
Commented by パンタタ at 2013-01-14 18:48 x
雪太郎さんへ

詩は内容もですが、
気持ちを乗せる舟、
つまり文体自体を切り開いていく作業です。
だらだらやると終わらないです、笑
雪ちゃんなら出来そうだけど...



Commented by ya at 2013-01-20 18:36 x
あす、お誕生日ですね。

きのうまで対の落ち葉を拾いしが素数のあした刻まれた生

泰子
Commented by パンタタ at 2013-01-21 21:57 x
ya さんへ

歌をよせていただけるなんて、幸せ者です。
「素数」は引っかかったけど、ホムペみて納得。

Commented by ya at 2013-01-28 04:58 x
奇数だと、おもしろくないので、素数に飛びました。 笑
by alglider | 2013-01-13 23:10 | 短歌 | Comments(5)