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あるのすさび

さびしさを糸でかがればかぎ裂きのかたちしてをり棘のあるらし


by alglider
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第二の否認

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 摂津市断酒会創立5周年記念大会に行ってきました。摂津市断酒会は、入院していた病院の最寄り駅から二つ目の駅でやっていたから、入院中からずっとお世話になっていて、アル中の兄と偶然はち合わせをする、という小説よりも奇なる体験をした断酒会でもある。退院してからも1年間は欠かさず出席させてもらった。でも今日は、ちょっとした待ち合わせの行き違いがあって、1時間遅れての参加となった。

 記念講演は福井大学講師の西川京子先生。ずっとアルコール依存症者を抱えた家族問題に関わられている。講演の前半は家族がアル中を助けては、また飲酒する。サラ金などの尻拭いををしては、飲める条件を再構築する。警察は50代の一人前の大人でも家族に引き取りに来させる、といった、所謂イネイブラー・ループの話に当てられた。そのイネイブラーの構造が解明されたのは、ほんの30年ほど前ということだったから、以前の家族はアル中再生産工場といったふうだったのかも知れない。

 で、最近では新しい問題が起こっているという。それは、もう10年近くお酒を止めている旦那さんがいて、その奥さんが[離婚したい]と相談を持ち込んでくることがあるという。断酒会で長年お酒を止めている人は、会長や副会長など、なにかと世話役をやっている人が多い。その、奥さんに言わせると[断酒会のことばっかりやっていて、家庭を顧みない]ということになる。一方、旦那さんの言い分は[お酒止めていくだけで精一杯。他のことなんてとても]ということになる。

 これは断酒会などでよく話題になる[酒を止めているだけでよいのか]という問題だ。西川先生に言わせると、安定期に入っても[お酒を止めているだけ]というのは、次の現実に向き合わない[第二の否認]ということになるそうだ。とにかく止め続けるというのは、この時期になると対処療法みたいなもので、未来の問題は家族関係の方にあるのは当然だ。会長をやっている人の奥さんが、家族としての体験談を話す。アル中の私が言うのも何だが、そらぁ、悲惨なものが多い。しかし、夫婦二人そろって並んでいると、やっぱり男の方が偉そうにしていることがほとんどで、前から不思議に思っていた。酒害者本人が[止めるだけで精一杯]の言葉で[酒を止めているだけでよいのか]の問題を片付けても、家族の方からは[止めているだけではダメ]と答えが提出されている。しかも[第二の否認]として定義されるかたちで。[精一杯]を金科玉条のようにかざして通用するのにも、賞味期限があるということだ。

 私にも、同様の経験がある。体験談で話すこともあるのだが、入院費に30万円ほどかかって、保険が100万円ほど下りたから、70万円の焼け太りとなった。私は、その70万円を頼りに断酒会回りをひたすらしていた。その70万円が10ン万円になったころだっただろうか、去年の秋ごろです、お咲きさんが風呂上がりに、髪を拭きながら[ちょっと聞きたいことがあるんやけど]と切り出した。[保険で下りたお金、全部あなたが使っていいと思ってるの?][保険はあなたのためといっても、私がお金を払い続けていたのよ]。そう、私が自分の保険金を払うはずがないもの、私の稼ぎはすべてお酒代に変わっているのだから。私は、酒を止めるために断酒会回りが必要なら、回るための費用、交通費や食事代などなど、つまり保険で下りた70万円はすべて使っていいと、何のひっかかりもなく、オートマチックそう思い込んでいた。本当にその言葉を聞いた時は腰の力が抜けて崩れて落ちそうになった。何も応えられなかった。昼の断酒会に出て、夜の例会までの間、喫茶店で過ごすなんて優雅なことをやっていたのだった。お咲きさんは怒るでもなく[あなたのそういうところって、本当に不思議だわ]と言った。

 お咲きさんは、あまり私の断酒などに興味がないかのごとく、話に乗らない。私が飲んでいたときも、ひたすらかかわりを持とうとはしなかった。かつて、断酒会に[つぐないをします]という宣誓文があるという話をしたら[まぁ、やらしい]と言った人である。[つぐない]という一過性のニュアンスを持つ逃げを許さなかったのかもしれないし、刑罰を背負うような断酒には意味を見い出さなかったのかもしれない。しかし、私がお酒を止めるために、回りが見えなくなっていることには、警告を発した。いや、たんにお酒とは関係なしに[あなたのその性格おかしいわよ]ということなのだと思う。そこに[断酒]なんて理由を持ち込まないで、ということだ。ありがたいことで今のところ[第二の否認]に陥ることなく、私は、酒を止めることの意味を考える作業ができている。

今日のながらCD
CROSSING THE UNITED STATES/THE WHO

今日の一文
新しきものの予感の湧くごとし見てゐるガラスの青き切口
                                   板宮清治                  
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Commented by office-nekonote at 2006-05-14 18:10
けすくせ?
Commented by パンタ at 2006-05-14 19:13 x
19歳かぁ。「ミク」さんまた寄り道してくださいな。芸能界志望ですか? 早くから、お酒に手をださないでくださいね。
Commented by パンタ at 2006-05-14 19:20 x
これは大阪の駅前第2ビルの地下にあるオブジェです。実物は2メートル弱の球体で丸太を垂直に組み合わせたうえで、その中から球体を掘り起こした、という感じです。実際はもっとセンシティブな細かい作業で造りあげたものだと思いますが。もう一つ赴きの違った作品があります。また掲載します。韓国の作家だったような気がします。そういえば、気に入っているのですが、題名とか作家名を控えていませんでした。迂闊者ですな。そんなとこで分かります?
Commented by プータロー at 2006-05-14 22:17 x
酒止めてるだけでは駄目だと、先輩諸氏から忠告有りますが、次がすんなりとは・・・・
己を変えて行くプログラムではありますが・・
お咲きさん、冷静な発言ですなぁ
Commented by office-nekonote at 2006-05-14 22:22
巨大な葱坊主みたいな感じでしょうか?
Commented by パンタ at 2006-05-14 22:44 x
プータローさん。お咲きさんのモットーは多分巻き込まれないことだと思います。[そんなん、かなんしんどい]と言うてました(- -;)
Commented by at 2006-05-14 22:46 x
今日のAA女性OSMで出た言葉「お酒を飲まないだけの私は、参考書を買って、勉強をした気になっている学生かもしれない」。
Commented by パンタ at 2006-05-14 23:04 x
慎さん。みんなうまいこと言わはんねぇ。[酒を止めているだけ]も賞味期限の間は一所懸命[止める]に徹したらいいと思います。また、そういう時期は絶対必要だと思います。しかし、期限が切れていることに気づくためには、懸命から一歩離れて自分を見つめる必要や他者の目が必要になってくると思います。自戒をこめて...
Commented by パンタ at 2006-05-14 23:16 x
たま猫さん、巨大な葱坊主というより、縞模様からすると西瓜のような感じかなぁ。パターン2は巨大かりんとう、のようです。これも直径2メートル弱あります。本当に人通りがないところに設置されていて、保管に困ったのよ、ってな行政の失礼さを感じる展示なのです。だから、私がときどき見に行くのです。たはっ。
Commented by office-nekonote at 2006-05-15 00:19
>保管に困ったのよ、ってな行政の失礼さ
これはひどいですねえ。カフカ指数目いっぱいですな。
お世話して見てあげないと作品は弱りますから、PANTAさんよろしくお願いします。

それにしてもお咲きさんは一緒に住んでいて巻き込まれないのはすごいですねえ。
オットォ!(・o・ノ)ノ~は巻き込みたくてうずうずしておりますよ。でもかまってやんないもん。
Commented by alglider at 2006-05-15 00:26
お咲きさんは、私にかまうと、私がつらい顔をする、私がつらい顔をしているのを見るのは自分に悪影響を与える。てな具合でウチの家はお互いに強さがベースではなく、弱さがベースなのです。
Commented by machi at 2006-06-01 18:50 x
家族の立場で「酒止めてるだけでええんか」と、ずーっと思っていました。
私がそれを言うと「止めているだけでええやん」。そう言われ、それって「おかしいやろ?」っとずーと思っていることでした。
自分の考えが押さえ込まれていたのを解放してもらい、お互いが自分というものを考え直すチャンスととらえました。
by alglider | 2006-05-14 16:38 | 回復過程 | Comments(12)