財布をなくす   一首


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23:57


空 た か く 枝 を 離 る る 音 の す る さ よ な ら だ け が 降 り 注 ぎ た り



そらたかくえだをはなるるおとのするさよならだけがふりそそぎたり





 凹んで


 いる。というのも6日に病院に行き、自動精算機で支払を済ませ、ロビーのソファに座り、医療明細書や血液検査結果を見ていて、さあ、と処方薬局に向かった。向かう途中で虫の知らせか、財布が気になった。それで鞄の中を見ると、ないのである。道に中身をぶちまけ探したが、ない。あー、なんたるちゃ。明細書などを見ているときに鞄にしまわずに横においてしまったんだろうな、たぶん。


 来た道を探しながら、急ぎ病院に戻りソファを中心に自動精算機やトイレを探したがなかった。受付にその旨を伝えると、何だか「ここは部署がちがいます」というようなそっけない態度。何人かに尋ねてもらったが、誰も預かっていないという。そういう問題ではなくて、あってもなくてもこちらは届け出をしておきたいのである。


 あらかさまに困った顔をしていた女性受付係は、偶然表に出てきた事務係の男性を見つけ、天の助けとばかりに私の件を託した。また一から話すと、驚いたことにこの病院には、遺失物の情報を管理する部署がないという。病床数600以上の大総合病院にしては不備であると言っていいと思う。「はあ」と深く溜息ついて近くに交番があるか尋ねたら、知らないので110蕃してくれという。交番を聞くのに救急用である110番を勧める非常識もどうかと思うし、調べると、なんと最寄り駅前、目と鼻の先に交番はあった。ここまできたら危機管理能力ゼロ職務怠慢としか言いようがない。はあ、先生たちはいいのになあ。


 で、交番でお決まりの届け出を出して、クレジット、キャッシュカードなどを電話で止めたが、さてお金が小銭しかない。火曜日から飲まなきゃならない抗がん剤も買えない。困ったときは拓ちゃん頼み(ごめんね)。ちょうどその日は拓ちゃんところで短歌友達の忘年会だったので、車で迎えに来てもらって一万円を借りたのだった。カード類は止めたが健康保険証などサラ金で悪用されないか、など要らぬ想像力による心配事が泥沼から浮き上がるあぶくのように時々私を悩ませる。



 とまあ、なくなったものは仕方がない、打てる手は打った、と一件落着のようだが、気持ちはものすごく凹んでいる。加齢による注意散漫もそうだが、何より「なくす」という事実に対抗する力が少なくなっていることに驚く。些細なことが私をさいなむ。多くの既成のもので出来上がった船に乗っている。毎日が毎日のように続くと思っていると、小さな喪失が自分自身の喪失のように感じられる。笑っていた日々はどこへいった。




 そんなこんな。




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只今のながらCD

APRYL FOOL / THE APRYL FOOL
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Commented by izumi at 2014-12-08 00:37 x
大きな病院なのに、困った病院ですね。心配しながらたくさん動き回られて疲れもあると思います。ぐっすり寝て、元気を出して下さいね。パンタタさんにいい事があるように祈っています。
Commented by パンタタ☮ at 2014-12-09 22:14 x
izumiさんへ

返事書くのを忘れてました。大きな病院は機転が小回りが利かないですね。町医者の気配りと大病院の先端性を兼ね備えた病院がないものか。
キャッシュカードがないから借金ばかり、笑。

by alglider | 2014-12-07 22:35 | 短歌 | Comments(2)

さびしさを糸でかがればかぎ裂きのかたちしてをり棘のあるらし


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