何も捨てない パンタ短歌 15

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 調べることがあって、福島泰樹さんの歌集を、本棚からえいやっと引っ張り出した。いつもは国文社の現代歌人文庫を愛誦しているのだけれども、今回の調べものには間に合わない。久しぶりに箱から引き抜くと、湿った香りがして、シミがちょこまかと走り回る。天気も続くみたいだし、これを機に曝書をしなければならぬなぁ。


ウィスキーびん冬の畳に転がってわれに花やぐ眠りの宴

二日酔い無念極まるぼくのためもつと電車よ まじめに走れ

                        歌集『バリケード・一九六六二月』より


切口をさらす刺身に箸刺せばどつとあふれる涙誰がため

戦わず思わず叫ばず語らわずのっぺらぼうの二合徳利

                         歌集『エチカ・一九六九年以降』より


みぞれ降る ひとを思わば朝一合夜五合の酒を飲むかも

なすこともなさず飲んでおれば六月の庭あじさい咲かず

一生を飲んで終われとさすらいのさんざめく川さて渡ろうか

酒のんで飲んでどうする咲く花の瓶に差したるこころざしとよ

                               歌集『晩秋挽歌』より


ワンカップ大関の蓋ひらくためにはあらねどもまた汽車に乗る

吹雪せり窓の外にも情(こころ)にも愛しておるよ酒をくだされ

                              歌集『転調哀傷歌』より


 調べものと同時に、お酒の歌の多い福島泰樹だから気になったものを書き出してみた。まだまだあるんだけれども無作為に(それだけに心に残る歌か......)に選んでみた。


 入院中に、一人のアル中さんが家からの電話に「ジョニー・ウォーカーのマークの入ったグラスなんか全部捨てておけよ」と命令しているのを聞いてしまったことがある。命令している相手は多分奥さんであろう。奥さんもたいへんである。[アル中が命令する立場かっ]などと思ったのだが、3ヶ月の入院生活の中で見舞いに来る奥さんに命令口調で威張っている男患者は多くいた。こら治らんなと思っていると、退院して断酒会を回るとお酒を止め続けていても威張っている人もまた多いのである。不思議であるアル中以前の心の病か........ 

 で、[ジョニー・ウォーカーのグラス]はお酒に関するもの、思い出のあるものを捨て去って、心機一転のために捨てられるのだろう。人それぞれだからそういう方法も、あり、だろう、が、私は何も捨てなかった。どうでもよいものはアル中であろうがなかろうが捨ててしまう、というか失ってしまうし、思い出の付着したものは捨てるには忍びなかった。例えそれが、貝口の猪口といったお酒に絡んだものでも、それにまつわる心までは捨てられまい、と手元に残している。これはこれで、またあり、なのであろう。アル中になったからといって、誰を恨むこともできない、ましてお酒を恨むことなんて私にはできない。それらのお酒にまつわるものものは、また酒断ちに役立つものものでもある。ましてやこれらの歌は捨てられまい........

 途中まで書いていて眠ってしまった。写真は27日に送信、文章は28日の更新になってしまった。朝から暑い、大洗濯をしなければばば........



今日のパンタ短歌

バリケード エチカ 晩秋と読みやれば酒何ならんかつて心よ


只今のながらCD
UNIVISION/GAZEBO
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Commented by at 2006-07-28 22:48 x
ここのところ、たびたびコメントしてるのですが、消えてます。
私の送信ミスか?、それとも不適切内容につき、削除を受けてるのか?、不安になりました。
不適切で削除ならば、私の携帯にお叱りメールを下さいませ。
Commented by 貉パンタタヌキチ at 2006-07-28 23:16 x
コメント届いていないすよ。不適切なんて、それならそれなりの対応しますですよ。消すなんて、知らぬ人の書き込みじゃあるまいし、そんな失礼なことはしませんですよ、ハイ。しかし、どうして
でしょうね?
by alglider | 2006-07-27 12:43 | 回復過程 | Comments(2)

さびしさを糸でかがればかぎ裂きのかたちしてをり棘のあるらし


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