弔い雑記

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23:19

 私の短歌友だちの


 文さん f_blueな日々のブログには短歌と共によく野鳥の写真がアップされる。その写真で覚えたジョウビタキという鳥を最近裏山でよく見かける。雀ぐらいかやや大きいか、そのぐらいの大きさで胸からお腹にかけてがきれいなオレンジで、黒っぽい羽根に白い班があるのが特徴で、覚えてしまうと見逃すことはない。


 比較的よく見られる鳥だそうだが、越冬に渡ってきているとか。繁殖地はロシアの透明深度や魚類固有種で有名なバイカル湖やチベットだという。雀ぐらいの鳥が、そんな彼方から渡ってきていると思うと、こちらも遥か彼方を彷徨ってしまう。


 で、そのジョウビタキがやってくるチベットには鳥葬という風習がある。亡骸を野ざらしにして猛禽類の食べるままにしておくのかな、と思っていたら違っていた。以前テレビでチベット僧が読経しながら、鉈のような刃物で亡骸を小さく切って、空中の肉食鳥に与えていた。そうなのである。漫然と死んだら鳥葬なんていいな、と思っていたりもしたが、小さく切られてしまうのだ。山間に横たえていてくれたら、ジョウビタキに啄んでもらえる可能性もあったのだが。


 で、もう亡くなった知人に、テレビ構成作家の神田さんという人がいた。街歩きの番組の台本を書いていた人で、こちらは街歩きの冊子を作っていたから、よく一緒に街を歩き、お世話になった。その神田さんは、まだまだ仕事ができる年齢なのに、ふと引退して奥さんの故郷の信州に隠遁してしまった。好きな蕎麦を食べ、フリースクールやパソコン教室をしていたみたいだが、しばらくしてあっけなく死んでしまった。今から思えば、癌だったのだろう。それを知っての引退で隠遁だった。


 その神田さんは、大阪にいるとき都島区に住んでいて、よくお酒を飲み明かしたマンションからは大川が見えた。奥さんからの「亡くなりました」の知らせの葉書には「神田はあなたのことをとても心配し気にかけていました」とあった。それは、私の人としての弱さとお酒に囚われた生活への憂いだったと、今なら思うことができる。信州へ来るように誘われても、お酒で蕩尽してしまう私には旅費がなく、それだけでなく遠のいた人に私は薄情だった。奥さんから、神田さんの好きだった大川で散骨をすると連絡があったが、もう私には、行かなければならないという、まともな判断はできなかった。ただただお酒を飲み、神田さんの死を嘆いたが、今から思えば身の回りのあらゆることが疎ましかっただけではないか。まともな判断ができぬのなら、まともな嘆きもなかったにちがいない。私にはそのような過去がいっぱいあって、今、それを言葉で追いかける日々だ。お酒をやめてから大川沿いを歩くときは、神田さんを思い出し、非礼と不義理の許しを乞い、今の自分と会ってほしいと思う。あと一か月すると大川は桜の川になる。






只今のながらCD

SEXTET・PIANO PHASE・EIGHT LINES / STEVE RICHE
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Commented by at 2008-03-06 23:46 x
以前は同居人の病気を言い訳にして、今は自分の病気を言い訳にして、幾人かの友人を失ってしまったし、今も失いつつあるわけで。

ジョウビタキ、そんなに遠くから着てるなんて!
あんなに小さな身体で。

私は、死んだら、高知の海に撒いてほしいな。
けして、けして土には埋めないでもらいたいな。
blueの骨と一緒に、波打ち際からでいいから(^_^)
Commented by NEU(ノイ!) at 2008-03-07 01:02 x
>非礼と不義理の許しを乞い、今の自分と会ってほしいと思う。

↑つくづく感じ入る次第であります。
Commented by くも at 2008-03-07 08:34 x
うーん、せつないなあ。心に残る文章です。

というより、パンタタさん、やっぱり文章、
うまいや。
Commented by マリア at 2008-03-07 09:26 x
誰でも長く生きれば生きるほど後悔する出来事が背中に積もっていってどんどん腰が曲がってきるような気がします
でも、あんまり過去を追いかけすぎないでくださいね 自分を責めすぎないでね
そのときはそうとしか生きられなかったのでしょうから 病気だったのだから 
あははっ 何だか自分に言っております (^^ゞ
Commented by ヨーコ at 2008-03-07 09:54 x
>大川沿いを歩くときは、神田さんを思い出し、非礼と不義理の許しを乞い、今の自分と会ってほしいと思う。あと一か月すると大川は桜の川になる。

パンタタさんの悔恨と嘆きが切々と伝わってくるようです。

誰しも、このように切ない、慙愧に耐えない想いは胸の中の奥底に澱のように潜んでおります。。
だからこそ、このパンタタさんの文章を読むと 切ない、何故だかわからない哀しみで胸がいっぱいになります・・・・

名文です。
Commented by ヨーコ at 2008-03-07 10:12 x
胸をつかれました・・・・
(最初に、このコメントを入れるのを忘れてしまいました。)
Commented by パンタタ at 2008-03-07 22:18 x
文さんへ
そうなんです。ジョウビタキって遠いところから渡ってきてるんです。
偉い、立派、そしてかわいい。
高知の海ですか、そう思えるところがあるというのはいいですね。
Commented by パンタタ at 2008-03-07 22:20 x
NEU!さんへ
だよね。というわけで、会える人には死んでしまう前に会っときましょう。何人かは腹をくくって会いに行きましたよ。うーん。
Commented by パンタタ at 2008-03-07 22:23 x
くもさんへ
文章は淡淡と書き続けたいです。はい。
Commented by パンタタ at 2008-03-07 22:28 x
マリアさんへ
先日、お咲きさんがストレッチポールなる、背筋を伸ばす、言えばやや柔らかい丸太ん棒を買いました。その上に寝転がり、背筋を伸ばすようにしています。だから腰は曲がりません。
って、こうやって文章を書いたり短歌作ってたら大丈夫ですわ。
Commented by パンタタ at 2008-03-07 22:30 x
ヨーコさんへ
何か、もそもそと鳥葬のことを書いていたら、
こんな文章になってしまいました。とほほ。
Commented by おぽんち at 2008-03-07 23:52 x
逢える人には逢っておきたいのは同感です。
鳥葬はいいですね。日本ではダメなんだろうけれど…。
ネイティヴ・アメリカンの人たちが昔行っていた話を聞いたことがあります。
Commented by パンタタ at 2008-03-08 00:23 x
おぽんちさんへ
そうやよねぇー、
会える人には会っておかなくては。
と、最近、なんだか残された時間が少ない予感がするんです。
鳥葬、日本でやったら犯罪でしょうね。
おぽんちさん、食ってくれる鳥はどれがいいですか?
って、そんなこと考えませんか。はは。
兄がヘビメタ攻勢をかけてきています。
Commented by おぽんち at 2008-03-08 19:43 x
鷹かな…、いや鳶かな…。
脂身が多いのでうまいぞう。
お兄様どうして急にヘビメタっていらっしゃるのでせう。
Commented by パンタタ at 2008-03-08 22:19 x
おぽんちさんへ
鷹か鳶ですね。どっちが親でしょうか? なんて。
兄はビートルズから始まってハードロック、ヘビメタと真っ当に、
ロック史を追っかけてきてるんですね。
私はプログレ、パンクをきっかけに脇にそれてしまいました。
でも、年賀状にはシルビー・バルタンとチンクェッテイを聴いている
て書いてあったのになぁ。うーん。
Commented by おぽんち at 2008-03-09 14:33 x
ふーん、そういうお兄様がいらしたら自然に聴いておられたことでしょう。
私もプログレ結構好きでした。
シルビーバルタンとチンクェッティを聴いてメタリカへ移行するところがすごいなあ。
Commented by パンタタ at 2008-03-09 22:16 x
おぽんちさんへ
何だか変なんですよ。
急にシルビー・バルタンの写真、
メールしてきたりしますから。
by alglider | 2008-03-06 19:10 | 日々是口実 | Comments(17)

さびしさを糸でかがればかぎ裂きのかたちしてをり棘のあるらし


by alglider
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