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あるのすさび

さびしさを糸でかがればかぎ裂きのかたちしてをり棘のあるらし


by alglider
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移ろいの番人 + 短歌推敲

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23:41

 帰り、


 駅前のスーパーに寄った。その時間なら半額になっているものがある。ブロックカットされた西瓜を買おうと、売り場に目をやると二つ残っている。えっちらとカゴをもって前まで行くと、先に覗いていたおばさんが、なんと二つともカゴに入れてしまった。何たるちゃっ! んで、気を取り直してお気に入りのサラダも半額になってるかもしれんと、売り場へ向かうと、目の前で最後の一つを女の子が手に取ってしまった。何たるちゃっ! ちょと迷っているような素振りなので、棚に戻すかとしばらく見ていたが、戻しそうもないし、それよりなにより変なおじさんと思われても困るのであきらめた。



 明日は生ごみの収集日なので、マンションのごみステーションへ出しに行った。するとエントランスのところに、見た目四十代の男がしゃがみ込んでいる。手で何かをつまみあげている。それは、何だか濡れた布きれのようで、月明かりを背景に黒々として、ときどきてかりと光る。布きれのようなものをつまんで立ち上がった男性の恰好は奇妙なもので、昭和三十年代に流行った太い幾重にもタックの入ったズボンと白い長袖カッターシャツで襟も袖もボタンをきっちりと閉めている。髪はポマードで後ろに撫でつけている。不思議な光景であった。この時間、エントランスにいる人物といえば普通、男なら半ズボンでサンダルである。ごみを捨てに行く人が多いのだし、会社帰りとしても鞄を持っていないのが奇妙である。これはまるで何かの正装ではないか、と思ったとき男のロイド眼鏡の奥がぎろりと光った。


 男は、その黒い持ち重りのするものを、近くの木に置いた。私は、何も見なかったようにごみステーションへ向かい、戻ってくると男はもういなかった。男が木に置いたものが気にかかる。こわごわ近寄って見てみると、それは雄のかぶと虫一匹であった。それは必死に木にしがみついていた。


 ああ、と私は合点した。あの男は季節の移ろいの番人であったのだと。まだ死んではいけない命の残りの時間を巻き戻していたのだと。男がしゃがみ込んでいたところを振り返って見つめると、月影が濡れていた。明日の朝にはかぶと虫は死んでいるのかもしれない。夏の主役だったものが、移ろい、その生命を終えていく。そうなのだ、と思っているといっせいに秋の虫の音が耳に飛び込んできた。






推敲

午 睡 か ら 目 覚 め て う つ つ ベ ラ ン ダ の 溶 け る サ ボ テ ン 日 日 の 根 腐 れ




ごすいからめざめてうつつべらんだのとけるさぼてんひびのねぐされ







只今のながらCD

ALADDIN SANE / DAVID BOWIE
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Commented by やねうらねこ at 2008-08-18 21:36 x
うーん…このひかりの感じには惹かれまする。
Commented by パンタタ at 2008-08-18 22:12 x
やねうらねこさんへ
これは自然光ではないんです。
ホテルに飾ってあったやつを、
天井の照明を意識しながら、
ちょいと下からのアングルで、露光も多目にして、
といっても携帯なんですがね。
by alglider | 2008-08-18 19:38 | 短歌 | Comments(2)