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あるのすさび

さびしさを糸でかがればかぎ裂きのかたちしてをり棘のあるらし


by alglider
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時計 + 短歌

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23:48

 私の


 利用する田舎駅前でホームレスを一人見かける。都心でなら珍しくはないが、田舎町では珍しい。だから、彼は孤独である。大阪城公園のホームレスのように将棋を指す相手もいないし、安酒を酌み交わす相手もいない。アルミ缶を集めるという経済活動をする姿も見かけない。もう5年以上は住んでいる。生きている。真冬はどうしているのだろう? 彼には定まったブルーテントの家があるようでもない。たぶん公園の四阿で雨露をしのいでいると思う。真面目な話、けっこう人は生きていけるなあと感心する。元来もっている体力が私とは違うのかもしれないが、ゆくゆく路頭にさまよう可能性を持っている私としては、心強いというか……


 孤独な彼は、独語症が出てきて、ほんの時たまぶつぶつと独り言を言っているが、誰に危害を加えるわけでもないから、朝の通勤時の駅舎のベンチに座っていたりする。ロータリーにある自販機の前に座り込んでいたりする。


 一年分の衣類が入っているのだろう、大きな鞄を二つ持っている。座り込んで、一つは横に置き、もう一つは目の前に置き、その上に大きな目覚まし時計を載せている。大概は一心にその時計を見つめている。彼の宝物である。命綱である。その時計がなくなれば彼は狂って死んでしまうかもしれない、とふと思う。駅前のロータリーには大きな時計塔があるし、公園にもある。周りには時刻を知る手立てのものは、それ以外にあるのに、いかにもその鞄の上に載せた時計だけが彼の時刻であるようだ。


 朝が来たから起きるのではなく、夜になったから寝るのではなく、彼はその時計を見つめ「もう何時になったから寝よう」と、自然の時間ではなく、時計という時間によって唯一社会とつながっている。社会から切れて、恬然と生きているのでもないし、泰然自若と悟っているのでもないし、野放図に自由なのでもない。その大ぶりの目覚まし時計が彼の社会との接点で、時計という時間の書割が、逆説として彼の自由の根拠のようである。






目 を 閉 じ て 顔 そ そ ぎ を り そ の 貌 見 る 術 も た ず 水 は 冷 た し





めをとじてかおそそぎおりそのうわべみるすべもたずみずはつめたし






只今のながらCD

親愛なる者へ / 中島みゆき
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Commented by ちん at 2008-10-21 22:52 x
兄が三ヶ月間やめていた酒にまた手が出てしまった



両親はその間幸せだった



またもとの生活に戻ると
思うと

つらい
Commented by パンタタ at 2008-10-22 00:16 x
ちんさんへ
はじめまして。

このような「独白」の文を目にして、私は大変、周章狼狽しております。
ハラハラしております。心拍数があがっております。

経験上、三か月は難しい、再飲酒しやすい時期だったように思います。
詳細がわかりませんので、どうお答えしたらいいのか。
書き込みで、少しでも気持ちが軽くなら、また書き込みください。

お兄さんは、専門病院で診てもらっておられるでしょうか?
自助会(断酒会やAA)に通っておられるでしょうか?
Commented by テキーラ at 2008-10-22 12:59 x
現代社会の中において人々が共有しえるものは時間」だけではないでしょうか?だから人の集まる広場等には「時計」が不可欠です。


面白い歌ですね。
一点、「り」が切れすぎていませんか?「る」ぐらいで繋げて

目 を 閉 じ て 顔 そ そ ぎ をる そ の 貌 見 る 術 も た ず /水 は 冷 た し


ぐらいで切った方が僕はより好ましく思いました。
くもさんみたい。へへ。失礼。





Commented by パンタタ at 2008-10-22 23:02 x
テキーラさんへ
昔、時計が高価なものであったとき、親は大人になった印として、腕時計を買い与えました。私の時代ですと、中学入学祝いでした。それを指して、寺山修司さんが「子供が自分の時間を持つことを親が禁止、抑制しているのだ」と、ま、あのころに時代評論をしていました。でも、そんな批評も中国産で全部通じなくなってしまいました。百均で買えれば、時間は誰のもでもない。それゆえに時間は喩となるのでしょうね。時間と言えば、「そののち歌会」のお題が「時間」。くもさん、makoさん参加でえらい白熱してます。ついていけないけど勉強というか、こういうものなのか、と思いながら読み込んでおります。
私としては「貌」で切りたいところですが、駄目?
なかなか落ち着いた歌ができないなあ......
Commented by くも at 2008-10-22 23:34 x
近代を支えた装置は「時計」だとアルビン・トフラーが
言っています。

きょうの文章はプロですね。

テキーラさん、どこが「くもさん」みたいなんや?
あ、添削するところ?

そうかあ、無自覚でしたね、わたし自身。

といいながら、

目 を 閉 じ て 顔 そ そ ぎ を り そ の 貌 見 る 術 も た ず 水 は 冷 た し

「そ の 貌 見 る 術 も た ず」がもたついていますよね。


ところで、makoさんとはどなた?

文法を「このわたし」にご教授いただいているような気がします。
未曽有の経験です、はい。




Commented by パンタタ at 2008-10-23 00:06 x
くもさんへ
ご指摘のもたつきの部分、一番悩んだ部分です。さすがだなあ、元はもっとひどかった。「見る術を」の方を何とかしたらいいのかな。

makoさんは確か中部短歌会の超ベテランの方ではないでしょうか。本名は書いたらあかんというか、忘れてしまいました。歌歴の長い方だとおもいます。
Commented by くも at 2008-10-23 01:06 x
ベテランですか。そんな感じですが、
書き方はヤングですね。いまヤングとか言わない?

じゃ、阿諛追従しておきまひょ。


で、歌ですけど、腰の句がちゃんとしないと
支えられないから、「貌見る」あたりじゃないんですか?

by alglider | 2008-10-21 19:43 | 短歌 | Comments(7)